妻から夫への資金の移動を贈与と認定、審査請求を棄却
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:08/02/2011  提供元:21C・TFフォーラム



 亡くなった妻から夫への資金の移動が相続税法9条の対価を支払わないで利益を受けた場合、つまりみなし贈与に当たるか否かの判定が争われた事件で、国税不服審判所は、妻が夫の預金を使い込んだという具体的な証拠書類もないことから、対価を支払わないで利益を受けた場合に該当すると認定して、審査請求を棄却した。

 この事件は、原処分庁が審査請求人の妻名義から請求人(夫)名義に資金が移動した事実関係を踏まえ、贈与税の申告がないと認定、贈与税の決定処分等を行ったことが発端になったもので、妻から夫に移動した資金は妻から債務の弁済を受けた日には請求人のものになっていた等と請求人が主張して、原処分の全部取消しを求めていたという事案だ。

 請求人は原処分庁の指摘に対して、1)関係法人に対する妻名義の貸付金の弁済金の一部を請求人の預金口座へ入金したこと、2)妻名義の預金口座からの出金を請求人名義の預金口座へ入金したこと及び請求人から関係会社の代表者への貸付けに充てたことについては、妻名義の貸付金及び預金は妻が請求人の預金を使い込んだという事実関係の下、妻の退職金によって弁済を受けた金員が原資になっており、元々、請求人に帰属するものであると反論。そのため、いずれの資金の移動も、相続税法9条に規定する対価を支払わないで利益を受けた場合には該当しないことから、贈与されたものではないと主張していた。

 これに対して裁決は、請求人の妻が請求人の預金を使い込んだというのは請求人の憶測に過ぎず、使込みに関する具体的な証拠書類も見当たらないことから、請求人の主張を採用することはできないと斥けた。結局、一連の資金の移動は、相続税法9条が規定する対価を支払わないで利益を受けた場合に該当すると認定して、請求を棄却している。

(国税不服審判所、2010.04.22裁決)