物納申請後の税務職員の対応に職務上の法的義務違反を認定
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:12/12/2006  提供元:21C・TFフォーラム



 相続税の物納許可が遅れたことで相続人が物理的損害・精神的損害を被ったか否かの判断が争われた事件で、東京地裁(金井康雄裁判長)は納税者の主張を認め、税務署等に対して600万円の損害損害金の支払いを命じる判決を言い渡した。

 この事件は、相続に伴って相続税の物納申請をしたものの、税務署・国税局等の職員等が適切に処理せず、物納申請後10数年経過してから漸く物納を許可したことが発端になったもので、相続人が物納許可の遅延に伴って損害を被ったと主張、税務署等に対して国家賠償法に基づく損害賠償と遅延損害金の支払いを求めていた事案だ。つまり、物納申請の処理を担当した税務職員等に職務上の法的義務違反があったか、さらに物納許可が遅延したことで相続人に損害が発生していたか否かが争点になっていたわけだ。

 これに対して判決はまず、物納申請の処理をした税務職員等に職務上の法的義務違反があったか否かについては、事前相談の段階において物納申請財産の問題点をすべて把握することは困難であったことから、事前相談の段階で物納財産の補完を要する事項が明示されなかったことに職務上の法的義務違反があったとは認められないと判示。しかし、物納申請後の税務職員等の対応には職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と審査していたものと認定して、国家賠償法1条にいう違法の評価は免れないと判示した。

 その結果、還付を受け得たであろう日の翌日から実際に還付を受けた日までの間の利息相当額の物理的損害を被ったと認定するとともに、精神的苦痛も被ったと認定、国側に対して物理的損害と精神的損害に伴う賠償金600万円の支払いを命じる判決を下している。

(2006.10.25東京地裁判決、平成16年(ワ)第5735号、損害賠償請求事件)