収益還元法をできる限り斟酌した土地の評価が相当と判示
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:05/13/2003  提供元:21C・TFフォーラム



 相続した土地の評価額が争われた事件で、東京地裁(藤山雅行裁判長)は原処分庁が採用した取引事例比較法による比準価格は無視できないものの、収益還元法による収益価格を上回る規範性を有しているとは認めがたいと判示、課税処分を一部取り消す判決を下した。

 この事件は、相続によって取得した住宅地にある土地と商業地にある土地の2つの土地と非上場株式の評価額の算定方法が争われたもの。課税処分が取り消されたのは商業地にある土地の評価方法。原処分庁は、バブル崩壊によって地価の下落が激しいことから評価通達によらない個別評価が適当という考えにたって収益還元法による試算を試みたものの、結局、収益価格は推定的判断を余儀なくされる場合があり、規範性に欠ける面を有すると判断、取引事例比較法に基づく比準価格が適当という主張をしていた。そこで、納税者は、収益還元法による収益価格が不当に軽視されていると反論していたわけだ。

 これに対して判決は、土地の収益性に着目してその価値を算定する収益還元法は、その算定に著しい困難性や不合理性がない限り、できる限り斟酌されるのが相当であり、とりわけ賃貸用土地や一般企業用土地の評価には一層の有用性を有すると指摘。その上で、取引事例比較法による比準価格は無視できないものの、収益還元法による収益価格を上回る規範性を有しているとは認めがたく、双方を同等に用いるべきであると判示して、結局、適切に算定された比準価格と収益価格を単純平均して求めるのが相当であるという判断を下して、課税サイドが主張していた評価額を取り消している。

(2003.02.26 東京地裁判決、平成12年(行ウ)第221号)