和解の内容が民法上の遺産分割には該当しないと認定、棄却
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:12/21/2010  提供元:21C・TFフォーラム



 第一次相続の遺産分割が未了の間に第二次相続が開始した結果、第一次相続人と第二次相続人との間で交わされた遺産分割訴訟に伴う和解を理由にした更正の請求が妥当か否かの判断が争われた事件で大阪高裁(岩田好三裁判長)は、訴訟和解の内容が民法上の遺産分割には当たらないと判断、原審を支持して相続人らの主張を棄却した。

 この事件は、第二次相続(母)の相続人らによる期限後申告に対して増額更正及び無申告加算税の賦課決定処分を受けた相続人らが、第一次相続(父)の相続人との間に遺産分割をめぐる訴訟上の和解が成立したことに基づき後発的な更正の請求をしたところ、更正すべき理由がない旨の通知処分を受けたことが発端となった。

 つまり相続人らは、更正処分等には相続財産の範囲等に関する原処分庁の判断誤りがあり、訴訟和解が課税標準及び税額等の計算の基礎となった事実の変更に当たると主張して原処分の取消しを求めて提訴したわけだが、一審の大阪地裁が棄却したため更にその取消しを求めて控訴していたという事案だ。

 これに対して控訴審の大阪高裁は、訴訟和解の内容が第一次相続の遺産に係る部分は分割確定済みの遺産を中核とする権利義務関係を全体として将来に向かって変更し、確定させる趣旨のものであると認定。その上で、訴訟和解の内容は民法906条が定める遺産分割には当たらず、相続税法55条、32条1号の「当該財産の分割」にも当たらないと指摘して、訴訟和解を理由にした相続税の更正の請求は認められないと棄却した。当然、国税通則法23条2項1号の更正の事由にも該当しないと判断して請求を斥けている。

(2010.05.20 大阪高裁判決、平成20年(行コ)第153号)