最高裁、武富士裁判の弁論再開
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:12/02/2010  提供元:21C・TFフォーラム



 消費者金融大手(現在会社更生法申請)「武富士」の創業者一族による、海外との税制の違いを巧みに利用した大規模な節税スキームの是非をめぐり争われている「武富士裁判」の上告審で、最高裁判所第二小法廷は、平成23年1月21日に双方の言い分を聞く口頭弁論を開くと決定した。

 当時武富士の香港法人代表を務めていた武富士創業者の長男は、平成11年に武富士株を大量に保有するオランダ法人の株(1653億円相当)を両親から生前贈与された。当時の税法では、海外居住者が海外財産を贈与された場合については課税対象外とされていたため、長男は贈与税の申告をしなかったが、国税当局は「贈与税回避のための移住したかたちを作っただけで、実質的な居住地は日本」と判断して、1653億円という贈与税としては史上最高の申告漏れを指摘。無申告加算税173億円を含む1330億円の追徴課税を行ったことから、裁判に至った。

 東京地裁では、1)長男は香港法人代表として現実に業務に従事していた、2)香港滞在の目的のひとつに贈与税負担回避があったとしても、香港を拠点に活動していた事実は消滅しない――などの理由で、武富士長男側が勝訴。ところが二審の東京高裁では、「香港での職業活動の実態があっても、生活の本拠は東京にあった」とみなされ、一転して国側勝訴となった。

 武富士長男側は上告したため最高裁判断に注目が集まっていたが、地裁判決から3年以上経過したいま、口頭弁論が開かれることが決まり、二審判決が見直される可能性が出てきたとして強い関心が寄せられている。

 武富士長男は納税を済ませてから争っているため、かりに勝訴となると、返還される税金には利息に相当する「還付加算金」が付いてくる。その額たるや数百億円とも言われており、破格の還付加算金の行方にも注目が集まる。