主たる居住用宅地に限らないと判示したが結果は逆転判決
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:05/20/2009  提供元:21C・TFフォーラム



 限度面積以下であれば複数の宅地等に小規模宅地等特例の適用が可能か否かの判定が争われた控訴審で、福岡高裁(石井宏治裁判長)は同特例の適用対象は主として宅地等の用に供されていたものに限定されないと解釈して納税者勝訴の判決を下した佐賀地裁の判決に対して、同特例の解釈は支持したものの、そもそも居住用宅地等の要件を満たしていないという事実認定を行った上で納税者敗訴の逆転判決を言い渡した。

 この事件は、既に家屋(A宅地)を有していた者が死亡前に、仕事や通院の便宜を踏まえてマンション(Bマンション)を購入したものの、購入後1年余で亡くなったため、2つの宅地等を相続した相続人がその申告の際に2つの宅地等に対して小規模宅地等特例を適用して申告したところ、原処分庁が同特例は主として宅地等の用に供する土地等に適用が限られると判断して更正してきたため、その取消しを求めていたもの。

 この訴えに対して原審が、同特例の適用対象は主として居住の用に供する土地等に限定されないと解釈した上で、生活の改善を目的にA家屋とBマンション双方において生活することを選択した一つの生活スタイルに基づくものであると認定して納税者勝訴の判決を下したため、国側が原審の取消しを求めて控訴していたという事件だ。

 控訴審は、同特例の適用対象については原審と同様の解釈をしたものの、Bマンションではほとんど生活されず、利用も散発的であったと事実認定。その結果、家屋とマンションの両方に居住するスタイルも確立していなかったから、Bマンションを生活の拠点として利用していたとは認め難いと指摘、国側の更正処分を妥当とする逆転判決を下した。控訴審の判決内容が事実認定事案になってしまったため、上告が受理されるか否か危惧される事案になった印象もある。

(2009.02.04 福岡高裁判決、平成20年(行コ)第27号)