農地法施行前の貸付農地でも耕作権を控除した評価額が妥当
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:04/24/2007  提供元:21C・TFフォーラム



 相続で取得した貸付農地を自用農地として評価するのか、耕作権相当額を控除して評価すべきなのか否かの判定が争われた事案で、国税不服審判所は賃貸借の効力が生じており、耕作権に該当すると判断、原処分を全部取り消す裁決を下している。

 この事案は、審査請求人が相続により取得した貸付農地に対して、原処分庁が賃借権の設定について農地法3条の許可を受けていないから自用農地として評価すべきとして相続税の更正処分等を行ってきたことから、耕作権相当額を控除して評価すべきであると主張して、原処分の取消しを求めていたという事案だ。

 原処分庁は、被相続人は農地法3条の賃借権の設定等に関する許可を受けるための賃借権設定の許可申請を行っていないから、請求人が主張する実質的な耕作権は財産評価基本通達に定める耕作権として評価上控除の対象となるものには当たらないから、自用地としての評価額が妥当と主張して、取消請求の棄却を求めていた。

 これに対して裁決は、耕作権は農地法20条1項が適用される賃借権に限られるものの、審査請求された農地の一部が農地法の施行(昭和27年10月21日)前から引き続き賃貸されていたと認定。農地法施行前の農地の賃借権の設定等に関しては、農地法の許可または承認を要することなく有効に成立していると解釈できることから、賃借人に相続が開始した場合は、その相続人が賃借権を適法に承継したものとして取り扱われるため、農地法の保護を受ける賃借権つまり財産評価基本通達9の(7)の耕作権に該当することになり、耕作権の価額を控除して評価するのが妥当と判断、原処分を取り消している。

(国税不服審判所、2006.06.19裁決)