不動産賃貸を営む米国LPSの賃貸物件の償却費の損金算入を否認
カテゴリ:01.法人税 トピック
作成日:12/13/2016  提供元:21C・TFフォーラム



 米国のリミテッド・パートナーシップ(LPS)が営む不動産賃貸事業に係る不動産の減価償却費を法人の所得金額の計算上損金算入が可能か否かの判断が争われた事件で東京地裁(舘内比佐志裁判長)は、米国のLPSは我が国の租税法上の法人に該当するものの、不動産賃貸事業により生じた利益又は損失をLPSに帰属するものとして課税上取り扱わないものと解すべき特段の事情を認めるに足りる証拠がないと判示して、我が国の法人側が求めた原処分の取消請求を棄却する判決を言い渡した。

 この事件は、米国の州法に基づくLPSの持分権を取得とした我が国の法人が、LPSが営む不動産賃貸事業の賃貸物件である減価償却資産の減価償却費を損金に算入して、法人税の確定申告をしたのが発端。この申告に対して原処分庁が減価償却費の損金算入を否認、更正処分の上、過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたことから、我が国の法人がその全部取消しを求めて提訴したという事案である。

 判決はまず、LPSが我が国の租税法上の法人に該当するか否かの判断は、その組織体が外国の法令によって日本法上の法人に相当する法的地位を付与されていること又は付与されていないことが疑義のない程度に明白であるか否かを検討すべきであり、組織体が権利義務の帰属主体であると認められるか否かを判断すべきと指摘。というのも、設立根拠法令の内容や趣旨等から、組織体が自ら法律行為の当事者となることができ、かつその法律効果が組織体に帰属すると認められるか否かを検討する必要があると解されるからだ。

 その結果、LPSは我が国の租税法上の法人に該当するものの、不動産賃貸事業はLPSが行うものであり、その事業から生じた利益や損失をLPSに帰属するものとして課税上取り扱わないと解すべき特段の事情を認めるに足りる証拠もないと判示、損金に算入することは認められないとして日本法人側の主張を斥けている。

(2016.04.27東京地裁判決、平成25年(行ウ)第38号)