新しい納税者救済制度の弱点
カテゴリ:08.国税通則法 トピック
作成日:07/10/2014  提供元:21C・TFフォーラム



 行政処分に関する救済制度を定めた「行政不服審査法」(行審法)の改正法が6月13日に公布された。主な改正内容は、1)不服申立前置制度の見直し(不服申し立てを飛ばして直接提訴を可能に)、2)不服申立期間の延長(現行の2ヵ月から3ヵ月に)、3)審理の公正性の向上(第三者諮問機関の設置等)、4)請求人の権利拡充(証拠資料のコピーを可能に)??などがある。

 行審法改正による新しい救済ルールは、納税者にとって有利な見直しが多く「ようやく納税者目線の生きた制度に救済ルールに生まれ変わった」と大きな期待が寄せられている。しかし、これを受けた改正国税通則法については問題点を指摘する声も多い。国税に関しては、特別法として国税通則法に独自の「不服申立制度」が設けられており、こちらが行審法より優先される。今回、行審法の改正に合わせて国税通則法も大幅な見直しが行われているが、中には独自路線を貫いている部分もあり、一部で物議を醸しているのだ。

 まず、第三者諮問機関の設置を「不要」としたこと。国税に関しては国税不服審判所がすでにその役目を果たしているということだが、国税不服審判所の「第三者性」について疑問視する声は多い。「審判官や審査官は殆どが税務署や国税局からの出向者。これでは公正な判断は難しい」(国税OB税理士)。

 また、「不服申立前置制度」を維持したことにも異論が多い。国税通則法では、現行の「異議申し立て」を「再調査の請求」に変更するとともに、納税者の選択により再調査の請求を経ずに直接、審査請求できるスタイルに改正。ただし、審査請求した後でなければ提訴できないというルールはこれまでと変わらない。しかし、例えば税務署の処分に対して違憲を訴えるような事案の場合は税務署や国税不服審判所の手には負えないため、「納税者の選択により提訴できるようにすべき」(都内弁護士)という意見は少なくない。

 改正によりようやく「納税者目線」に立った救済制度だが、課題も山積。今後の調整や実際の制度運用をしっかり監視していく必要がある。新制度の施行は平成27年4月になる見込みだ。