税務調査「30年に1度」が意味すること
カテゴリ:08.国税通則法, 12.国税庁関係 トピック
作成日:12/12/2013  提供元:21C・TFフォーラム



 税務調査の件数が激減している。公務員の定数削減により調査官の数が減少傾向にあるところへきて、国税通則法改正により今年1月から税務調査手続きが大幅に見直され、調査官たちが対応に追われていることが要因だという。

 国税庁のまとめによると、直近1年間に行われた法人税務調査件数は9万3千件で前年の3割減。実調率(申告件数に対する調査件数の割合)は3.1%で、前年の4.3%から1ポイント以上落ちている。これはつまり、これまで20年に1度だった調査が30年に1度になったということだ。税務調査は最大7年までしか遡れないため、いざ調査が入って申告漏れが見つかっても、更正されるのは過去7年分まで。残り23年分は「お咎めナシ」ということになる。

 もちろん、これはあくまで単純計算による数字上の話であり、過去に大口の申告漏れを指摘された会社などは継続管理の対象となって頻繁に調査が入る。しかし数字がすべての課税当局としては焦りの色を隠せない。国税庁ではこの「3割減」を重く受け止め、対応策として「情報収集や分析機能の充実、実地調査以外の接触方法の活用も積極的に進めていく」としている。

 「実地調査以外の接触方法」の一つに挙げられているのが書面照会。例えば同規模、同業種などの会社間で共通して見られるミスがある場合など、注意喚起のための書類を送付する。ミスを事前に防ぐことで、調査減少の穴を塞ぐわけだ。
 
 ちなみに調査件数は減っているものの、調査1件当たりの「成果」はむしろ増加している。調査による法人税の追徴税額はここ5年間で減少傾向だが、平成24年度の追徴税額は前年対比96.4%とほとんど変わらない。逆に税務調査1件当たりの追徴税額は3割増。不正1件あたりの不正所得金額などは過去最高を記録した。国税庁によると「通則法改正の影響による調査件数の減少を見込んで、調査対象の絞り込みの段階で大口悪質なものを厳選した」とのこと。調査件数が減っているとはいえ気を抜かず、むしろこんな時期だからこそ万全の態勢を整えておく必要がありそうだ。