代償金、弁護士費用の譲渡所得からの控除を否認
カテゴリ:04.資産税 裁決・判例
作成日:02/07/2001  提供元:21C・TFフォーラム



 相続によって取得した区分所有建物の譲渡所得の計算をめぐって、他の相続人等に支払った代償金が取得費にあたるか、弁護士に支払った費用が譲渡費用に当たるか否かが争われていた事件で、東京地裁(市村陽典裁判長)は相続によって取得した財産にあたることから、いずれの費用も譲渡収入から控除することはできないと判示、請求を棄却した。
 この事件は、相続した区分所有建物の遺産分割をめぐって、原告の相続人が建物の譲渡代金を原資に他の相続人に代償金を支払ったことを受けて、分離短期譲渡所得として申告したことが発端になったもの。その譲渡所得の計算の際、原告は代償金を取得費として控除するとともに、弁護士費用を譲渡費用として控除して申告したわけだ。ところがこれに対して、原処分庁は分離長期譲渡所得に当たると認定する一方で、取得費、譲渡費用の控除を否認、更正処分してきたことからその取消しを求めていたという事案だ。
 これに対して判決は、遺産分割協議の内容は代償分割とみるほうが他の相続人等の認識に合致することが認められ、他の相続人に譲渡代金を支払って区分所有建物の一部を単独相続したものと認めるのが妥当と判断。結局、当該財産は原告が被相続人から取得したものであり、代償金の確保のための譲渡は分離長期譲渡所得に当たると判示した。そうであれば、原告が他の相続人に支払った代償金は取得費には該当せず、弁護士に支払った費用についても弁護士が譲渡に仲介、立会い、代理等に関与した事実はなく、遺産分割の際の報酬であると認定して、原処分を妥当とする判断を下して納税者の主張を棄却した。
(2000.4.21 東京地裁判決、平成10年(行ウ)第4号)