共有家屋の一部取壊しの後の敷地の譲渡にも特別控除は可能
カテゴリ:04.資産税 裁決・判例
作成日:05/31/2011  提供元:21C・TFフォーラム



 共有持分を有する建物の一部を取り壊して更地にした敷地を譲渡した場合に3000万円特別控除の適用があるか否かの判定が争われた事件で、東京高裁(西岡清一郎裁判長)は原審判決を否定、土地の第三者への譲渡は自ら所有する土地の上に自ら所有する建物を取り壊した上でその敷地部分を第三者に譲渡した場合と同視できると判示して、納税者側の主張を全面的に認める逆転判決を言い渡した。

 この事件は、相続財産である土地建物の共有持分を有していた納税者が、持分に相当する建物の一部を取り壊して、持分に相当する更地にした土地の譲渡をしたことに伴い、一旦、譲渡所得の申告をした後、土地の譲渡に対するいわゆる3000万円特別控除の要件を満たすとして更正の請求をしたのが発端となった。ところが、原処分庁が共用部分及び居室が残っていることを理由に更正処分をすべき理由がない旨の通知処分をしてきた。

 そこで審査請求の上、通知処分の取消しを求めて提訴したものの、一審は家屋の取壊後も残存家屋部分の1階には共用部分及び居室が残存するとともに、2階には取壊前の居室が従前通り残存していることなどを理由に、3000万円特別控除の適用を否定して納税者の主張を斥けたため、控訴して更にその取消しを求めていたという事案である。

 東京高裁は、再度、事実関係を整理した上で、残存家屋部分が建物として残るという理由だけで3000万円特別控除の適用の余地を一切否定するのは、措置法35条1項、措置法通達35-2の趣旨に照らしても相当とは言えないと指摘。その結果、納税者による更地にした土地の第三者への譲渡は、自らの所有する土地の上に存する自らが所有し居住する建物を取り壊した上で、その敷地部分を第三者に譲渡した場合と同視することができると指摘して、結局、措置法35条1項の要件に該当すると解釈するのが相当と判示、第一審の判決内容を否定する逆転判決を言い渡した。

(2010.07.15 東京高裁判決、平成21年(行コ)第372号)