親子間贈与は公正証書作成日ではなく登記の日と認定
カテゴリ:04.資産税 裁決・判例
作成日:12/01/1998  提供元:21C・TFフォーラム



 親子間における不動産の贈与の時期が、公正証書を作成した日か、実際に所有権移転登記が行われた日かが争われていた事件で、名古屋地裁(野田武明裁判長)は公正証書に基づく書面による贈与が行われたとは認められないと指摘、納税者の主張を棄却した。
 この事件は、親が子へ居住用財産を贈与する公正証書を作成したものの、所有権の移転登記が行われたのはその8年後だったことから、課税サイドが登記を行った日を実際に贈与がされた日と認定、贈与税の賦課決定等をしたことが発端となったもの。そのため、納税者は書面による贈与のため公正証書を作成した日が実際の贈与日と主張するとともに、すでに更正決定の除斥期間を経過しているため贈与税の課税は時効になることから、賦課決定処分等の取消しを求めて提訴していた。
 しかし、名古屋地裁は、贈与したにもかかわらず、何らかの事情があって登記できない時や、登記のみでは明らかにできない契約内容がある時、などに公正証書を作成する目的があると示唆。だが、更正証書の作成日に贈与が行われ、引渡しもその日に行われていることを考えると、登記のみでは明らかにできないような契約内容になっていたとは認められないし、また、登記ができなかったやむを得ない事情も認められないと指摘、納税者の主張を全面的に斥けている。つまり、書面による贈与ではなかったと判断したわけだ。
 公正証書さえ残しておけば大丈夫という安易な節税指導がよく聞かれるが、課税の時効を狙いにした公正証書による贈与について経書警鐘をならした事件ともいえよう。
(1998.9.11名古屋地裁判決、平成9年(行ウ)第7号)