3,000万円控除の適用をめぐる争いで逆転勝訴
カテゴリ:04.資産税 裁決・判例
作成日:02/02/1998  提供元:21C・TFフォーラム



 居用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税特例、いわゆる3,000万円控除の適用をめぐり、譲渡資産が居住の用に供されていたか否かその有無が争われていた訴訟で東京高裁(今井功裁判長)は一審判決を覆し、納税者の主張を認める逆転判決を下した。
 この事件は、個人タクシー業者が家屋の敷地を譲渡したことに伴い3,000万円控除を適用して申告したところ、同特例の適用を原処分庁が否認したことからその取消しを求めて訴訟を起こしたが、千葉地裁が棄却したため控訴に及んでいたというもの。事実認定がポイントになった訴訟だが、一審は電気料や電話料の使用料、また前妻らの供述を根拠にした原処分庁の主張を拠りどころに、主たる居住地は前妻と別居後の原告(納税者)のアパートにあると認定して原処分を支持、訴えを棄却していたわけだ。
 これに対して控訴審は、控訴人、前妻と子どもの間には長年にわたる家族間の対立や葛藤があることから、その供述をただちに信用することはできないと指摘。また、電気や電話の使用料については、同特例の要件の一つである「譲渡の3年前の日の属する年」以前の分が不明であることを重視。アパートに係る電気や電話の使用料があったとしてもそれが控訴人が譲渡した建物に居住していたことを覆すものではないと判断して、一審判決と課税処分を取り消す逆転判決を下している。
 こうした事実認定絡みの訴訟で納税者が勝訴するのはごく稀れ。それだけに、本件の建物が営業活動や社会活動の拠点として評価した点には、実務への教訓も含まれている。
 (1997.7.22判決、平成8年(行コ)第82号)