節税効果のなかった贈与契約に係る錯誤の主張を棄却
カテゴリ:04.資産税 裁決・判例
作成日:12/12/2000  提供元:21C・TFフォーラム



 税務否認が続く配当還元方式を活用しての節税対策を通じて行った株式の贈与契約が錯誤によるものか否か、その判断が争われていた贈与税更正処分等取消請求事件で、千葉地裁(西島幸夫裁判長)は税務否認を理由に節税効果が上がらなかったとしてもその法形式を否定することはできず、錯誤があったともいえないと判示、納税者の主張を斥けた。
 この事件は、株式の評価額を配当還元方式によって低額に抑えることを目的にした会社を通じて株式を相続人等に贈与、相続税や贈与税の租税回避を狙った節税対策スキームの存在が背景になっている。この節税対策を通じて評価額が極端に安くなった株式を贈与された相続人が、贈与税額を600万円余とする申告を行ったところ、原処分庁が追加税額9億6000万円余、過少申告加算税1億4000万円余の賦課決定処分を行ったというもの。そこで、納税者が相続税の節税対策にもならず多額の税額が発生することを事前に知っていれば、このような株式の贈与契約はしなかったはずであるから、錯誤により贈与は無効になると主張。そうであれば、贈与税も発生していないのであるから、過少申告加算税等の賦課決定処分は取り消されるべきである
と訴えていた事案である。
 これに対して判決は、納税者の行為は一方で法形式選択の自由を享受しながら、他方で自らの選択を自らの判断の誤りをもって撤回する行為で、表意者の保護を目的とする錯誤の適用場面とは異なると指摘。節税対策の結果、期待した節税効果があげられなかったとしても、選択した法形式を今さら否定することはできず、錯誤とは呼べないと判示して納税者が求めた原処分の取消請求を斥けている。
(2000.3.27千葉地裁判決、平成10年(行ウ)第66号)