相続開始前2年内に取得した建物は鑑定評価額が妥当と裁決
カテゴリ:04.資産税 裁決・判例
作成日:06/07/1999  提供元:21C・TFフォーラム



 取引相場のない株式の一株当たりの純資産価額を算定する際の取扱いを定めた財産評価基本通達185の括弧書きに盛り込まれた相続開始前3年内に取得した建物等の通常の取引価額は、帳簿価額と鑑定評価額のいずれが妥当かその判断をめぐって争われていた事案で、国税不服審判所は評価会社の帳簿価額よりも鑑定評価書に基づく鑑定評価額が妥当であると判断、課税処分の一部を取り消す裁決を下した。
 この相続開始前3年内に取得した土地・建物等の取得価額に対する取扱いは、廃止された旧租税特別措置法69条の4の創設を受けて手当てされたもの。そこで、原処分庁は建物が相続開始日の2年前に取得されたものであり、取得価額も明らかであることから、この取得価額を基に減価償却費相当額を控除した金額、つまり評価会社の帳簿価額によって評価するのが妥当と認定して鑑定評価額を否認の上、過少申告加算税等の賦課決定処分をしたことから、納税者がその取消しを求めて審査請求していたという事案だ。
 これに対して国税不服審判所は、鑑定評価額がその価格の時点を相続開始日として建物の再調達原価を求めた上で原価修正し、さらに借家権の割合を控除して貸家に供されているものとして算出されていると認定。鑑定根拠を審判所が調査したところでも、特に不当と認められる要素はないと指摘している。その結果、請求人が主張する鑑定評価額は帳簿価額よりも時価を反映したものであり、財産評価基本通達185の括弧書きの通常の取引価額と認めるのが相当であると判断、課税処分の一部取消しを行った。
(国税不服審判所、1998.6.5裁決)