建築中の家屋と完成後の家屋は評価が異なると判示
カテゴリ:04.資産税 裁決・判例
作成日:04/19/2000  提供元:21C・TFフォーラム



 相続税の申告をめぐって宅地の評価方法の適否が争われた相続税更正処分等取消請求控訴事件では、建築中の家屋に係る評価方法の適否ももう一つの争点となっていた。

 控訴人である納税者は、建築中の家屋の評価方法として投下資本の額から30%を控除してその価額を算定するという課税サイドが主張した方式の控除率は、完成建物の投下資本額がその固定資産額を大幅に上回るものであり、完成建物と未完成建物との評価の均衡を図る観点から考えれば低率に過ぎる、と反論を展開していた。

 しかし、控訴審も一審判決を引き合いに、財産評価基本通達が課税時期における建築中の家屋の価額に対しては、家屋の費用原価の70%相当額によって評価することにしていることを踏まえ、その費用原価は課税時期までに投下された建築費用を課税時期の価額に引き直した額の合計額であると指摘。さらに、建築中の家屋と完成後の家屋は財産評価の原則に照らし、自ずとその各評価方法を異にする理由が認められるとも判示。そうである以上、投下資本額による評価額が完成後の家屋の評価額である固定資産税評価額と異なる場合が生じるのも避けられないことであると、納税者側の主張を全面的に斥けた。そうした考えを示した上で、たまたま完成後の家屋の固定資産税評価額が投下資本の額を下回る場合があるからといって課税サイドが示した評価方法が不合理であるともいえないと判示して、納税者の控訴を一蹴している。個別事情のある土地等の評価という考えが全面的に排斥された格好で、納税者にとっては不満の残る判決かもしれない。

 (1999.8.30東京高裁判決、平成10年(行コ)第198号)