配偶者控除廃止、夫婦控除が世帯に与える影響を分析
カテゴリ:02.所得税 トピック
作成日:10/05/2016  提供元:21C・TFフォーラム



 平成29年度税制改正に向けて、いよいよ配偶者控除見直しの議論が本格化しており、「夫婦控除」の新たな導入案が有力視されている。第一生命経済研究所は「配偶者控除廃止が世帯に与える影響」と題したマクロ経済分析レポートを発表し、配偶者控除の問題点を整理するとともに、夫婦控除の導入で再分配効果は高まるものの、いわゆる「103万円の壁」などの就労の壁は残存すると指摘している。

 レポートによると、配偶者控除の抱える問題点には、1)就労の壁、2)公平性、3)高所得者優遇、の3点がある。就労の壁になる要因としては、「世帯主の手取り減少」、「配偶者自身への課税開始」、「家族手当の支給停止」の3つを挙げている。配偶者控除に代えて、夫婦控除を新たに導入することで、2)、3)については解消される見込みだが、最大の問題である就労の壁については大きな進展はない、との考えを示している。

 そもそも夫婦控除がどのような制度になるのか又実現するのかは今後の議論次第だが、報道などによれば、夫婦控除は、1)配偶者の就労の有無にかかわらず、2)夫婦で使える、3)税額控除で、世帯年収800~1000万円程度で打ち切られる模様。おおまかに言えば、1)就労の有無を条件としないことで「就労の壁」問題を、2)夫婦で使えることで控除額の公平性を、3)税額控除で高所得世帯優遇を解消することを狙っている。

 レポートの試算では、夫婦控除への切り替えにより、一定の仮定のもとでは世帯主年収300万円世帯では、配偶者の年収要件がなくなるため、配偶者が働くほど、現制度よりも所得が増加し、1.9万~7.1万円世帯可処分所得が増える。一方で、世帯年収800万円世帯では最大で10.9万円世帯可処分所得が減少する。世帯年収800万円世帯では配偶者の年収が140万円を超えない限り、現状よりも世帯可処分所得が減ることになる。

 最大の問題である就労の壁については、世帯主の手取り減という心理要因が解消されるのみで、配偶者自身の課税や家族手当の問題は解決しないため、夫婦控除に切り替えても引き続き就労調整は残るとみている。レポートは、「これを機に、企業や政府がそれぞれ家族手当や社会保険制度改革に乗り出さなければ、人手不足下での就労調整という、労働力の無駄が残り、成長力引上げにはつながらない」とコメントしている。

 同レポートの全文はこちら