相続回復請求権は被相続人の遺産と判断、更正の請求を否定
カテゴリ:08.国税通則法 裁決・判例
作成日:07/31/2007  提供元:21C・TFフォーラム



 相続回復請求訴訟における和解によって相続税の課税標準に異動が生じたことを理由にした更正の請求の可否が争われた事案で、国税不服審判所は遺産の帰属が争われたものではなく、単に相続回復請求権の一部を和解日以降放棄したものにすぎないことから、国税通則法23条が規定する和解には該当しないと判断、審査請求人の主張を斥けた。

 この事案は、被相続人が死亡した年に養子縁組を行った者に対して、審査請求人らが養子縁組の無効確認請求訴訟を提起したところ、最高裁で養子縁組の無効が確定したことを受けて相続回復請求訴訟を提起するとともに、相続税の申告書を共同で提出したことが発端になったもの。その結果、判決で養子縁組が無効とされた者が審査請求人らに対して和解金3000万円を支払う旨の訴訟上の和解をしたわけだ。

 そこで、審査請求人らは相続回復請求訴訟における和解によって相続税の課税標準等に異動があったとして更正の請求をしたものの、原処分庁が更正すべき理由がない旨の通知処分をしてきたため、その取消しを求めていたという事案だ。請求人らは、相続回復請求権は実質的にみて被相続人の遺産であり、和解成立時に取得した相続回復請求権の範囲内で課税すべきであると主張した。

 これに対して裁決は、相続回復請求権の趣旨、請求人らの訴えの内容からすれば、遺産の帰属が争われたものではなく、和解は相続回復請求権に基づいた和解金を超える請求権を和解日以降放棄する趣旨のものであると指摘。その結果、和解は新たな権利関係等の創設のために行われたものであり、請求人らの課税標準、税額等の計算の基礎に異動を来すものではなく、国税通則法23条が定める和解には該当しない旨の判断を下している。

(国税不服審判所、2006.07.006裁決)