S・O訴訟で最高裁が過少申告加算税賦課は不当・酷と判示
カテゴリ:08.国税通則法 裁決・判例
作成日:10/31/2006  提供元:21C・TFフォーラム



 ストックオプションの権利行使益の所得区分が給与所得であることは既に最高裁判決で確定しているが、残されていた問題が一時所得として申告をした者に対する過少申告加算税の賦課決定処分の適否。これに対して最高裁(藤田宙靖裁判長)は課税庁の対応を批判、過少申告加算税の賦課は不当・酷であると判示して、納税者の主張を認容した。

 こうした問題が最高裁まで争われてきたのも、課税サイドが当初、ストックオプションの権利行使益を一時所得として取り扱ってきたものの、平成10年分の申告以降、急遽、給与所得としての取扱いに方向転換する一方、所得税基本通達にその旨が明記されたのは平成14年6月になってからという事情が背景にあったためだ。

 これに対して最高裁は、課税庁が従来の取扱いを変更する場合は、仮に法令の改正によらないとしても、通達を発するなどして変更後の取扱いを納税者に周知させ、変更後の取扱いが定着するように必要な措置を講ずべきであると指摘。にもかかわらず、課税庁が変更後の取扱いを通達に明記したのは平成14年6月のことであり、納税者が一時所得に当たると解釈して、その見解に従ってして申告したとしても無理からぬ面があり、納税者の主観的な事情に基づく単なる法律解釈の誤りに過ぎないと述べて、課税庁の対応を批判した。

 そうした事情を踏まえれば、権利行使益が給与所得に当たるものとして税額計算の基礎とされなかったことについて、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、過少申告加算税の趣旨に照らしてもなお過少申告加算税を賦課することは「不当」または「酷」になると指摘して高裁判決を破棄、取消請求を認容した一審判決が妥当という判決を下した。今後、課税庁サイドも対応の見直しが迫られよう。

(2006.10.24最高裁判決、平成17年(行ヒ)第20イチ号)