理由附記は制度の趣旨目的を充足する程度の記載でよいと判断
カテゴリ:08.国税通則法 裁決・判例
作成日:10/27/2015  提供元:21C・TFフォーラム



 理由附記の不備が原処分の取消事由に当たるか否かの判断が争われた事件で、国税不服審判所は帳簿未作成の青色申告事業者に対する更正処分の理由附記の程度は、帳簿書類の記載自体を否認することなしに更正をする場合に該当することから、理由附記制度の趣旨目的を充足する程度に記載すればよいと解釈して、審査請求を棄却した。

 この事件は、歯科技工業を営む審査請求人の所得税の申告に対して、原処分庁が事業所得に係る総収入金額に計上漏れ等がある、また基準期間における課税売上高が1000万円を超え、消費税等を納める義務が免除されないことを理由に、所得税の更正処分等及び消費税等の決定処分等をしたのが発端。そこで、請求人が調査に違法がある、理由附記に不備がある、さらに計上漏れと判断した総収入金額の一部は請求人に帰属しないなどと主張して、原処分の全部取消しを求めて審査請求した事案である。

 つまり請求人は、青色申告者の請求人に対する所得税の更正処分に係る通知書には、調査による計数上の記載や処分の結果のみが記載されているだけで、原処分庁の判断根拠が全く記載されておらず、更正処分を取り消すべき不備がある旨主張して、全部取消しを求めたわけだ。

 裁決はまず、請求人が事業所得を生ずべき業務の集計表等を作成するだけで日々の取引を記録する帳簿を作成していないことから、所得税の更正処分は帳簿書類の記載自体を否認することなしに更正をする場合に該当すると指摘。

 一方、原処分庁は更正通知書に事業所得に係る総収入金額については取引先ごとに取引期間及び年間の売上金額を一覧表で明らかにし、必要経費については計上漏れと認定した仕入金額等の支払先及び年間の支払合計金額等を記載しており、理由附記制度の趣旨目的を充足する程度に具体的な記載がされていると認定。結局、更正処分を取り消すべき不備はないと判断、審査請求を棄却した。

(国税不服審判所2015.03.30裁決)