復代理人の行為が納税者に及ぶ場合もあると初判示
カテゴリ:08.国税通則法 裁決・判例
作成日:01/05/1998  提供元:21C・TFフォーラム



 納税者の代理人から委任を受けた第三者、つまり復代理人が行った仮装・隠蔽の申告代理行為の効果(重加算税)が納税者にまで及ぶか否かが争われていた事件で、大阪高裁(富澤達裁判長)は無権代理であっても合理的な理由があれば納税者にもその責任が及ぶ場合もあると初めて判示、一審同様、控訴審でも納税者の主張を斥ける判決を下した。
 この事件は、納税者が土地をある不動産会社に譲渡、譲渡所得税の負担を同社に求めると同時に、同社顧問の司法書士に申告手続きを依頼したのが発端。そこで、納税者の承諾を得ないまま申告書の作成を第三者(いわゆる脱税請負人)に依頼したところ、その代理人が所得税法64条2項の特例を仮装して過少申告したというもの。これに対して、原処分庁が所得税の更正と重加算税の賦課決定処分をしたため、処分の取消しを求めて訴訟に及んだものの一審で棄却されたことから、納税者がさらに控訴していたという事件だ。
 納税者は、復代理人選任の許諾をしていないため民法104条の無権代理人にあたると指摘、その申告書は無効であり、申告の効果は納税者には及ばないと主張していた。
 しかし、控訴審は納税申告についても代理に関する明法の規定が適用されるものの、その性質や租税法の趣旨にそった合理的な理由がある場合は民法の適用が排除される場合もあると判示。また、選任や監督に納税者の過失があったとも認められないことから、無権代理人であっても申告の効果は納税者に帰属すると判断して、納税者の主張を斥け棄却している。無権代理人の行為も納税者に及ぶ場合があると判示した初めての判決だけに、その合理的な理由についてもう少し具体的な説明が望まれた判決といえよう。
 (1997.2.25判決、平成6年(行コ)第60、61、62号)