調査は机上調査を含む広い概念であると裁決、審査請求を棄却
カテゴリ:08.国税通則法 裁決・判例
作成日:03/31/2015  提供元:21C・TFフォーラム



 贈与税の期限後申告書の提出をめぐって、国税に係る決定を予知して提出されたものであるか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、国税通則法66条5項が定める調査は机上調査も含む広い概念であると解釈、審査請求を棄却した。

 この事件は、審査請求人が提出した贈与税の申告書が納期限後だったことから、原処分庁が無申告加算税の賦課決定処分を行ってきたのがそもそもの発端。そこで請求人が、期限後申告書の提出は、国税通則法66条5項に規定する「……その提出が……国税について…決定があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当すると主張して、賦課決定処分の全部取消しを求めて審査請求したという事案である。

 これに対して裁決はまず、国税通則法66条5項が定める「調査」とは、課税庁が行う課税標準等又は税額等を認定するに至る一連の判断過程の一切を意味し、課税庁の証拠書類の収集、証拠の評価あるいは経験則を通じての課税要件事実の認定、租税法その他の法令の解釈適用を経て決定に至るまでの思考、判断を含む包括的な概念であり、税務調査全般を指すと解釈。

 その上で、1)原処分庁の職員は、署内資料の検討等により、請求人の贈与税の申告が必要であると見込まれると判断し、2)担当者は、請求人の贈与税の申告について、税理士に面談し、資料の交付や説明をしていることなどが認められることから、これら一連の行為は、課税庁が行う課税標準等又は税額等を認定するに至る一連の判断過程であると認定。

 また、税理士が請求人に係る贈与税の申告の要否についての税務署での面接の際に、請求人に代理又は代行して応答し、面接の内容を請求人に報告するという内容の委任契約が成立していたものとも認定。こうした事実認定から、調査があったと認められる判断して審査請求を棄却している。国税通則法66条5項が定める調査の意義を明らかにした初めての裁決例として、実務的にも留意しておくべき必要があろう。

(2014.07.28国税不服審判所裁決)