1年以上の長期にわたる将来債権の譲渡契約も有効
カテゴリ:08.国税通則法 裁決・判例
作成日:06/15/1999  提供元:21C・TFフォーラム



 国税債権の優先順位との絡みから、1年以上の将来にわたる診療報酬債権の譲渡契約の有効性が問われていた事件で、最高裁判所(千種秀夫裁判長)は診療報酬の債権部分に係る契約の効力が否定されるべき特段の事情はないと判示、国側の主張を認容した一審・二審判決を全面的に覆す画期的な逆転判決を下した。
 この事件は、あるリース会社と診療報酬収入を担保にリース契約を結んだ医師が国税を滞納したことが発端になったもの。そこで、国は租税債権を徴収するため診療報酬債権を差し押さえたところ、その診療報酬債権は既に8年3カ月にわたる譲渡契約がリース会社との間で交わされていたため、国側が過去の最高裁判例(昭和53年12月15日判決)をより所に1年以上を超える債権譲渡契約は無効であると主張、リース会社を相手取って債権譲渡契約の無効確認請求を行っていたという事件だ。
 一審、二審とも、昭和53年最高裁判例をベースに国側の主張を受け入れ、リース会社の主張を斥けたため、リース会社がその取消しを求めて上告していたという事件だ。これに対して最高裁は、昭和53年最高裁判例は将来発生すべき債権を目的とする債権譲渡契約の有効性に関する一般的な基準を明らかにしたものにすぎないと判断。一方、医師が担保に適した財産を保有していなかったことからも、将来発生する予定の診療報酬債権の譲渡契約を交わしたことは合理的な行為であると指摘した上で、契約の効力を否定した原審判断には法令解釈上の誤りがあると判示、一審・二審の判決を覆す逆転判決を下した。
(1999.1.29最高裁判決、平成9年(オ)第219号)