被相続人の役員退職金の支払義務を請求人が免除したと認定
カテゴリ:08.国税通則法 裁決・判例
作成日:10/27/2009  提供元:21C・TFフォーラム



 代表取締役だった被相続人の役員退職金の算定根拠の誤りを理由にした相続税の更正の請求の可否が争われた事案で国税不服審判所は、退職金の一部を受領しなかったのは請求人らが退職金の支払義務の一部を免除したものであると認定、審査請求を斥けた。

 この事案は、審査請求人らが相続税の課税財産として申告した退職手当金等の算定根拠に誤りがあったという理由から、法定申告期限後の減額を理由に更正の請求を求めたのが発端。しかし、原処分庁は更正すべき理由がない旨の通知処分をしてきた。そこで請求人らは、相続税の課税財産として申告した退職手当金等の算定根拠の誤りを理由に相続税の法定申告期限後に減額され、一部しか受給できなかったのであるから、減額更正の請求は認められるべきであると主張して審査請求していたわけだ。

 これに対して裁決は、株主総会における被相続人に係る退職金及び弔慰金の支給決議は、議事録等から定款に従って満場一致で承認されていると認定。また取締役会議事録に退職金額の計算根拠に誤りがあった旨は記載されているものの具体的な記載がなく、また請求人らからも支給決議の意思表示に要素の錯誤があった旨の主張もなく、さらに審判所の調査からも支給決議を無効ならしめる事由は認められないと認定。つまり、被相続人に係る退職金等の支給並びに支給額は支給決議によって確定したとするのが相当であるという判断をしたわけだ。

 結局、請求人らが退職金の一部しか受領しなかったことについて、債務免除の意思表示があったとすれば、いったん有効に確定した退職金を遡及的に訂正して減額するのではなく、新たな法律行為によって請求人らが退職金の支払義務を一部免除したものと解するのが相当であるという判断の下に、審査請求を斥けたわけだ。

(国税不服審判所、2009.08.06裁決)