将来の権利関係を創設する和解と認定して更正の請求を否定
カテゴリ:08.国税通則法 裁決・判例
作成日:11/16/2010  提供元:21C・TFフォーラム



 訴訟上の和解の成立を理由にした相続税に係る更正の請求の可否判断が争われた事案で、国税不服審判所は和解が将来に向かって新たな権利関係等を創設する趣旨のものであり、国税通則法23条2項1号に定める和解には当たらないと判断、審査請求を棄却した。

 この事案は、生前、被相続人が生活を共にしていた者(利害関係人)にマンションを贈与する旨の負担付死因贈与契約を交わしたことがそもそもの発端。相続税の申告後、相続人らが利害関係人から死因贈与契約に基づくマンションの所有権移転登記手続を求める訴えを提起され、一審敗訴後、控訴審で贈与物件を譲渡して慰謝料として2億7000万円の金員を支払う旨の和解が成立したことから、相続税の減額更正の請求をしたところ、原処分庁が課税標準又は税額の計算の基礎となったところと異なることが確定したときには当たらないと認定、更正すべき理由がない旨の通知処分をしてきたため、その取消しを求めていたもの。つまり相続人らは、和解調書に死因贈与契約が無効である旨の一条項があるものの、実質的にはマンションの持分の2分の1が利害関係人に帰属することを認めたものであると主張して、原処分の取消しを求めていたわけだ。

 裁決は、和解条項によれば死因贈与契約が無効であり、マンションの請求人らへの帰属を確認したものであることが明確であり、マンションの持分の2分の1が相続開始日に遡って利害関係人に帰属することを認めたものではないと認定。しかも解決金は、利害関係人による被相続人の療養看護を認めて支払う旨を合意したものでもあり、相続開始日に利害関係人に支払うべきであったものとは認められないとも認定。結局、相続税の課税標準又は税額の計算の基礎となった事実が異なる和解ではないと判断、審査請求を棄却した。

(国税不服審判所、2009.11.16裁決)