納税税額を減少させる更正処分に対する審査請求は不適法
カテゴリ:08.国税通則法 裁決・判例
作成日:08/26/2014  提供元:21C・TFフォーラム



 所得税の申告が期限後申告になったことをめぐって、無申告加算税が課されない場合の要件を定めた国税通則法66条1項ただし書に該当する事実があるか否かの判断が争われた事件で、国税不服審判所は更正の申出に対してなされた減額の更正処分に対する審査請求は審査請求の利益を欠くためた不適法であると判断、審査請求を棄却した。

 この事件は、所得税の確定申告書が法定申告期限後に提出されたことを理由に原処分庁が無申告加算税の賦課決定処分をしてきたことから、審査請求人が法定申告期限内に確定申告書を提出できなかったのは、長男の死亡や妻の介護で請求人自身の精神状態が悪化して申告できる状態でなかったためであり、これは無申告加算税を定めた国税通則法66条1項ただし書きの「正当な理由があると認められる場合」に該当すると主張して、原処分の全部取消しを求めて審査請求したという事案である。

 また請求人は、税務署から申告案内の通知がなかったことや税に関する知識がなかったことなども理由に掲げて取消しを求めたが、原処分庁はいずれの主張も請求人の主観的な事情であることから、真に請求人の責めに帰することのできない客観的な事情があるとはいえず、無申告加算税の趣旨に照らしても原処分が不当又は酷になるものとはいえないことから、正当な理由は認められないと主張した。

 これに対して裁決は、更正処分が納付すべき税額を減少させるものであるから、請求人の権利や利益を侵害するものとはいえないと指摘。また、更正処分に先立って請求人が更正の申出をしていることに触れ、更正の申出の手続きは更正の請求と異なって法令上の根拠に基づくものではないことからすれば、単に請求人からの減額更正を求める申出を契機に原処分庁が調査に基づいて減額更正処分をしたにすぎず、それが請求人の求める減額の全ての金額ではなかったとしても、その権利又は利益を侵害するものではないとも指摘。結局、更正処分の取消しを求める審査請求そのものが不適法であると判断して、審査請求を棄却した。

(国税不服審判所、2013.12.19裁決)