調査初日の修正申告書でも更正の予知は認められないと判断
カテゴリ:08.国税通則法 裁決・判例
作成日:04/12/2011  提供元:21C・TFフォーラム



 調査初日に調査担当者に税理士が従業員の横領等の事実関係を説明した後の修正申告の提出が更正を予知したものか否かの判断が争われた事件で、国税不服審判所は、調査による更正を予知したと評価すべき理由は見あたらないと判断、原処分を全部取り消した。

 この事件は、不動産賃貸・会社の経営管理等を営む法人が従業員の横領の事実を把握して関与税理士に修正申告書の作成を依頼した後、調査初日に調査員に従業員の使込みを説明して関連資料を提出した後に修正申告書を提出したことが発端になったもの。これに対して原処分庁が、元経理担当者の横領による仮装隠ぺいを指摘して重加算税等の賦課決定処分をしてきたため、請求人側が更正を予知してなされた修正申告書の提出ではないと主張、原処分の一部取消しを求めて審査請求していたという事件である。

 これに対して裁決は、1)調査開始日の約4ヵ月半前に経理担当者の横領を把握して関与税理士に修正申告書の作成を依頼するとともに、納税者本人が申告の不適正を発見して資料等を把握し、2)関与税理士が事実確認、修正申告書の作成に時間を要していたところ、3)調査初日に調査員が帳簿を確認する前に、横領資料等の写しを交付して横領の事実を説明し、早期の段階に修正申告書の提出をする旨の申出をしていた事実等を確認。一方で、調査員が1)横領に繋がる資料を有しておらず、横領行為の一部の確認をしただけで、2)調査で横領の事実関係を明らかしたものではなかったと認定した。

 その結果、調査員は関与税理士等の申出に係る部分を除いて調査を行い、調査による更正を予知したと評価すべき理由は認められず、修正申告書は調査とは別に自主的に提出されており、調査があったことに基づいて提出されたとは認められないとも指摘。結局、更正があることを予知してなされた修正申告書の提出には当たらないと判断して原処分を全部取り消した。

(国税不服審判所、2010.06.22裁決)