雑収入発生の事実が認められない以上、仮装等はないと認定
カテゴリ:08.国税通則法 裁決・判例
作成日:12/02/2014  提供元:21C・TFフォーラム



 従業員からの預り金を返還しなかった事実を帳簿書類に記載していないことが、仮装隠ぺいの行為に当たるか否かの判断が争われた事件で、国税不服審判所は事実を隠ぺいした証拠が認められず、単なる過少申告に該当すると判断して、原処分を全部取り消した。

 この事件は、審査請求人が行った法人税の申告に対して、原処分庁が国税通則法68条の「隠ぺい又は仮装」の行為に該当する雑収入計上漏れの事実があると認定、また販売促進費が使途秘匿金に該当し、旅費交通費のうち業務に関連した事実が明らかでない支出を損金不算入とする更正処分等を行ってきたことから、請求人が更正処分の理由付記の内容に不備があるとともに、雑収入計上漏れの事実はないこと、さらに販売促進費及び旅費交通費の一部はいずれも損金に算入されるべきであると反論、その一部取消しを求めて審査請求したという事案である。

 原処分庁側は、請求人が従業員からの預り金をその従業員に対して返金しなかったことによる雑収入発生の事実を帳簿書類に記載せず、また雑収入発生の事実を裏付ける資料を関与税理士に提示せずに代表者の机の引出しに管理していた行為が「隠ぺい又は仮装」の行為に該当すると主張した。

 しかし裁決は、一つの預り金に関しては、雑収入発生の事実を認めることができない以上、隠ぺい又は仮装の行為は認められないと判断した。もう一つの預り金に関しても、雑収入発生の事実は認めることができるとしながらも、その事実を帳簿書類に記載していない、また資料が代表者の机の引出し内に管理されていた事実のみで、雑収入発生の事実を隠ぺいしたとまでは認めることができず、その他雑収入計上漏れの事実を故意に帳簿書類に記録せずに隠ぺいしたと見受けられる証拠はないとも指摘した。

 その結果、請求人はそもそも収益が実現したとの認識を有していなかったと認められることから、隠ぺい又は仮装の行為を認めることはできないと判断した。販売促進費・交通費については請求人の主張を斥けたものの、更正の期間制限の徒過、審判所認定額が原処分庁の金額を下回ったことなどを理由に、結果的に全部取消しという裁決内容になった。

(2014.02.21国税不服審判所裁決)