申告を委任した第三者の隠ぺい・仮装でも納税者本人に責任
カテゴリ:08.国税通則法 裁決・判例
作成日:10/24/2006  提供元:21C・TFフォーラム



 申告手続を第三者の税務職員に委託した場合に、受任者がした不正行為の効果が納税者に及ぶか否かの判断が争われた事案で、国税不服審判所は受任者に対する選任、監督上の注意義務が審査請求人に欠けていたことから重加算税の賦課決定処分は妥当と判断、審査請請求を棄却する裁決を下した。

 この事案は、請求人が税務職員に給与所得の源泉徴収票を交付して源泉所得税に係る所得税の還付を受けるための申告手続を委任したのが発端。これに対して原処分庁が、国税局の調査結果を踏まえて請求人の意思に基づかない修正申告書であると認定、重加算税の賦課決定処分をしてきたため、その取消しを求めていた事案だ。

 請求人は申告手続の代行を第三者に委任したものの、第三者が作成した申告書、支払調書等は請求人の了解を得ずに不正な還付請求をするために作成されたもので無効であるから、受任者がした隠ぺい・仮装行為の効果も請求人には及ばないと主張して、課税処分の取消しを求めていた。

 しかし裁決は、まず納税者の判断と責任の下で申告手続の代行を第三者に委任して、その受任者が申告を代行した場合、その申告は納税者本人がしたものと見なされ、その効果は請求人に及ぶと解釈。また、納税申告を第三者に委任した場合にその受任者が行った隠ぺい・仮装行為に基づく申告の責任を納税者がどこまで負うかは、納税者と受任者との関係、その行為に対する納税者の認識・可能性、黙認の有無、支払った注意の程度等に照らして個別・具体的に判断されると指摘。その上で、請求人は受任者に対する選任、監督上の注意義務を尽くさなかったと認められるから、受任者の隠ぺい・仮装行為は請求人の行為と同一視でき、請求人に重加算税を賦課できるという判断を下した。

(国税不服審判所、2005.10.26裁決)