別件判決は課税標準等に関する訴えではないと判示、請求を棄却
カテゴリ:08.国税通則法 裁決・判例
作成日:08/09/2016  提供元:21C・TFフォーラム



 判決の確定を理由にした更正の請求を巡り、その判決が国税通則法23条2項1項が定める判決に該当するか否かの判断が争われた事件で東京地裁(舘内比佐志裁判長)は、別件判決は公正証書に基づく権利関係を訴訟物ないし審判の対象として審理判断したものではないことから、課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に関する訴えには当たらないと判断、納税者側の請求を斥ける判決を言い渡した。

 この事件は、別件の所得税に係る更正処分の取消請求訴訟における判決の確定を理由に、消費税等に係る更正の請求をしたのが発端。しかし原処分庁が更正すべき理由がないと判断して更正の請求を斥けたため、畜産業を営む納税者が通知処分を違法と主張、その取消しを求めて提訴した事案である。

 別件判決は、肉用牛の売却に伴う事業所得に免除特例(措法25①)を適用してした確定申告が更正されたため、その取消しを求めた訴訟で、争点は1)免除特例が適用される肉用牛の範囲を2ヵ月以上飼育要件を満たすものに限定することの適否、2)飼育要件の意義、3)免除特例が適用される肉用牛に該当するか――否かにあったが、畜産業者側の請求をほぼ認める形で判決が言い渡され、確定した。

 畜産業者側は、別件判決の内容は肉用牛を譲り受けたことを判断したものであり、国税通則法が定める「…計算の基礎としたところと異なることが確定したとき」に該当すると主張したが、原処分庁側は、別件判決は免除特例の適用が受けられる肉用牛に該当するか否かを判断しただけのものであり、資産の権利関係の帰属が争われたものではないと反論した。

 これに対して判決は、国税通則法23条の趣旨に触れ、同条2項が定める判決は少なくとも、課税標準又は税額等の計算の基礎となった事実を審判の対象とする訴訟の判決であることを要し、その事実が計算の基礎としところと異なることが確定したとき、つまり当事者間の権利関係に変動が生じたといえる場合であることを要するものの、別件判決は訴訟物である課税処分の違法一般を審判したものであると指摘。その上で、公正証書に基づく肉用牛の所有権の移転を認定したとしても、このこと自体を審判の対象として、当事者間における事実関係を確定したものとは言えないと判示して、請求を棄却した。

(2015.09.18東京地裁判決、平成26年(行ウ)第418号)