不利益処分の理由の提示に不備を認定、原処分を一部取消し
カテゴリ:08.国税通則法 裁決・判例
作成日:07/14/2015  提供元:21C・TFフォーラム



 国税不服審判所の調査によれば、行政手続法14条が定める不利益処分の際に求められる理由提示に不備があったと認められることから、青色欠損金の控除額の加算の限りにおいて更正処分は取り消されるべきであると判断、原処分が一部取り消された。

 この事件は、し尿及び浄化槽汚泥の収集運搬業を営む同族法人の法人税等の申告に対し、原処分庁が売上金額の隠ぺいを認定した上で、一部を取引実績、一部を推計により算定して法人税等の更正処分等をしてきたため、隠ぺいと判断した売上金額は代表者個人に帰属するものであると法人側が反論、原処分の全部取消しを求めて審査請求したという事案。

 原処分庁側は、青色欠損金額の加算の理由を更正通知書に示していないのはその理由が青色申告承認の取消しに伴うものであり、法文の規定上も明らかであるから請求人が容易に認識できると指摘、不備はない旨主張を展開した。

 しかし裁決は、行政手続法14条が不利益処分をする場合に処分の理由を示すことを義務付けているのは、名宛人に直接に義務を課し又はその権利を制限するという不利益処分の性質に鑑み、行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を名宛人に知らせて不服申立てに便宜を与えるのが趣旨と解釈した上で、更正処分の際は通知書自体に法の要求する程度に処分理由を示す必要があると指摘。

 その上で、更正通知書には理由の提示がなく、控除額を所得金額に加算する旨を特定し得る程度の理由が示されていないのは明らかであるから、理由提示不備の違法を認定するのが相当という判断をした。しかし、同更正通知書に理由の提示のないこと自体が、更正処分全体の理由の提示不備とする程度に至るとまでは認められないとも指摘、結果的に一部取消しという裁決結果になった。

 (国税不服審判所2014.12.10裁決)