納税者本人の承認のない修正申告書は無効と判示
カテゴリ:08.国税通則法 裁決・判例
作成日:07/13/1998  提供元:21C・TFフォーラム



 納税者である父親の明確な承諾を得ずに、息子が署名・押捺して提出した修正申告書は有効か否かその是非が争われていた事件で、宮崎地裁(安藤裕子裁判長)は健康状態が悪く判断能力にも欠けていたと認定して納税者本人の意思に基づく修正申告ではないと判断、国側の主張を全面的に斥ける判決を下した。
 この事件は数点の理容店を経営する納税者が資料調査課の税務調査を受けた後に修正申告の慫慂を説得された際、健康状態が悪く、正常な話合いも無理だった原告に代わりその息子や従業員が原告の明確な承諾を受けずに修正申告書を提出したのが発端。この修正申告に対して、原処分庁が本税に加え重加算税を賦課決定してきたことから、納税者本人の意思に基づくものではなかったことを理由に、納付税額の債務は存在しないと主張、その確認請求訴訟を提起していたというもの。
 争点は民法上のいわゆる無権代理に該当するか否か、つまり息子等が行った修正申告の代理行為が有利か否かにあったわけだが、無権代理と判断されれば申告は無効となり納付債務は存在しないことになる。こうしたケースの殆どは事実認定がポイントになり、この当事者訴訟も事実認定に終始した判決内容となった。判決は原告の健康状態が極めて悪く、判断能力が十分でなかったなどの事実関係を指摘。そうした事実関係から、いったん修正申告を拒否した原告が修正に応じたとは認められないと判断、原告の主張を全面的に認めている。同判決を不服として国側は予想通り控訴。静岡地裁判決(平成6年12月22日)がその拠り所のようだが、同判決を考えると控訴審で逆転判決の可能性も。
(1998.5.25宮崎地裁判決、平成8年(行ウ)第1号)