控訴審も納税者本人の申告の意思の存在を否定
カテゴリ:08.国税通則法 裁決・判例
作成日:08/28/2000  提供元:21C・TFフォーラム



 納税者本人の署名・押印によらない修正申告書の有効性が争われていた控訴審で福岡高裁は、一審の熊本地裁と同様、納税者が代理人(納税者の長男)に修正申告書の作成依頼をした事実は認められないことから納税者本人の意思は認めがたいと判示、国側の控訴を全面的に棄却した。
 この事件は、理容業を営む病気療養中の納税者が税務署に来署した際に修正申告の慫慂を受けて動揺していたことから、それを見かねた長男が納税者の氏名を記載、押印して修正申告書を提出したことが発端。しかし、納税者本人は修正申告書の提出も記載内容も関知しておらず、修正申告は無効であると主張、納付義務不存在の確認を求めて提訴したわけだ。これに対して、一審の熊本地裁がこの納税者の主張を全面的に認める判決を下したため、逆に国側が一審判決の全部取消しを求めて控訴していたという事案。事実認定事案ではあるものの、民法上のいわゆる有権代理か無権代理かが問われた事案でもある。
 控訴審はまず、原審が下した判断は相当であると判示した上で、改めて両者の言い分の事実認定を行っている。つまり、修正申告書に納税者の長男が署名・押印した際の具体的な状況に対する控訴人と被控訴人の主張が180度異なっていることから、改めて事実関係を分析・検討して判断を下しているわけだ。しかし、控訴審も納税者本人の健康状態が思わしくなかったことを指摘、署名・押印について長男が納税者本人の同意を得ていなかった可能性のほうが高いと認定して国側の主張を悉く斥けている。
 (2000.6.13 福岡高裁判決、平成10年(行コ)第3号)