異議決定における理由の差替えに違法はないと判断、棄却
カテゴリ:08.国税通則法 裁決・判例
作成日:06/02/2015  提供元:21C・TFフォーラム



 原処分庁による更正処分の手続等に原処分を取り消すべき違法又は不当な事由があったか否かが争われた事件で、国税不服審判所は、異議申立ての審理等に瑕疵があったとしても、それは不服申立手続において生じた原処分後の事情であるから、原処分それ自体が違法又は不当となることはないと判断して、審査請求を棄却した。

 この事件は、販売委託契約に基づく医療機器等の受託販売を行う審査請求人に対して、原処分庁が推計課税による所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしたことめぐり、請求人側が更正処分の手続等に更正処分等を取り消すべき違法な事由があるとして、その全部取消しを求めて審査請求したという事案である。

 請求人は、異議審理庁が異議決定の際に、原処分段階では争いがなかった不動産所得の金額を新たに算定し、総所得金額が原処分を上回るから、原処分を適法であると判断して棄却したことが原処分を取り消すべき不当な事由に当たると主張して、原処分の全部取消しを求めたわけだ。

 しかし裁決は、審査請求の対象は原処分であり、裁決は原処分が違法又は不当であるときにこれを取り消すものであり、異議申立ての審理・判断に仮に瑕疵があったとしても、それは原処分に対する不服申立手続において生じた原処分後の事情であると指摘。その上で、原処分それ自体が違法又は不当となることはないから、原処分を取り消す理由とはなり得ないとも指摘した。

 さらに、原処分に行政手続法14条が規定する理由の提示に欠けるところはなく、原処分の理由と異なる理由を審査請求で主張することを制限する法令もないと指摘。結局、審判所がこれを審理することは、当事者の主張(つまり争点)を審理の対象とするものであるから、争点主義的運営にも反するものではないと指摘して、審査請求をいずれも棄却している。

(2014.08.01国税不服審判所裁決)