減額更正後の増額更正に伴う延滞税は発生しないと判示
カテゴリ:08.国税通則法 裁決・判例
作成日:01/13/2015  提供元:21C・TFフォーラム



税額の納期限までの期間にわたる延滞税が発生するか否かの判断が争われた事件で最高裁(千葉勝美裁判長)は、法定納期限の翌日から増額された税額の納期限までの期間に係る延滞税は発生しないと判示、納税者側の主張を認容する判決を言い渡した。

 この事件は、相続財産の評価誤りを理由にした更正の請求による過納金の還付後、原処分庁側が逆に評価誤りを理由に増額更正し、新たに納付すべき本税額に関して、法定納期限の翌日から完納の日までの期間に係る延滞税納付の催告をしてきたため、納税者側が延滞税の納付義務がないことの確認を求めて、上告審まで争ってきた事案である。

 原審は、国税の申告及び納付後に減額更正がされると減額された税額に係る部分の具体的な納税義務は遡及的に消滅し、その後、増額更正された場合、増額された税額に係る部分の具体的な納税義務も新たに確定することから、増差本税額に相当する部分については、相続税の法定納期限の翌日から増差本税額の納付日までの期間に係る延滞税が発生すると判示して、相続人側の主張を棄却した。

 しかし上告審は、延滞税の趣旨・目的に照らすと、増差本税額に相当する部分について、増額更正によって改めて納付すべきものとされた増差本税額の納期限までの期間に係る延滞税の発生を法が想定していないと指摘。その上で、相続税のうち増差本税額に相当する部分は、相続税の法定納期限の翌日から増額更正に係る増差本税額の納期限までの期間については、国税通則法60条1項2号において延滞税の発生が予定されている延滞と評価すべき納付の不履行による未納付の国税に当たるものではないというべきであるという判断から、相続税の法定納期限の翌日から増差本税額の納期限までの期間に係る延滞税は発生しないと解釈した。結局、原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反があると指摘、原判決の破棄は免れないと裁判官全員一致で言い渡した。

(2014.12.12最高裁第二小法廷判決、平成25年(ヒ)第449号)