訴訟係属中を理由にした期限後申告でも正当の理由は否定
カテゴリ:08.国税通則法 裁決・判例
作成日:01/23/2007  提供元:21C・TFフォーラム



 保険金請求訴訟が係属中のためその支払いが確定しなかったことから、期限内に相続税の申告書を提出しなかった場合にも正当な理由があるか否かの判断が争われた事案で、国税不服審判所は各生命保険金が相続財産に属するとみなされないことを客観的に裏付けるに足りる事実を認識して期限内申告書を提出しなかったとは認められないことから、期限後申告に正当な理由があったとは認められないと判断、審査請求を棄却した。

 この事案は、請求人が受取人である生命保険金の一部を保険会社が支払いを拒絶したため保険金請求訴訟を起こしたところ、原処分庁が訴訟係属中に、保険金を相続財産とする相続税の決定処分、無申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、期限内申告書を提出しなかったことに正当な理由があると主張、その取消しを求めていたという事案だ。

 つまり、原処分庁は訴訟係属中でも保険金を取得したのは被相続人の死亡時であると主張し、請求人は訴訟係属中であるから保険金請求権の存在が確実とは言えず、保険金を取得したのは各訴訟の判決確定日であり、被相続人の死亡時ではないと主張していたわけだ。

 裁決は国税通則法が定める「正当な理由」を説明した上で、請求人が被相続人の死亡によって保険金請求権を取得している、保険会社に保険金の支払請求をしている、保険金事故事由を同じくする3社の保険金が相続人死亡後に支払われている事実等々を認定。その結果、相続発生から訴訟確定までの一連の推移を総合考慮すれば、生命保険金が相続財産に属するとみなされない、また可能性が低いことを客観的に裏付けるに足りる事実を認識して期限内申告書を提出しなかったとは認められないと指摘する一方で、期限後申告に正当な理由があったとも認められないと判断、審査請求を棄却している。

(国税不服審判所、2006.02.27裁決)