納税猶予の不許可処分に裁量権の逸脱はないと判示
カテゴリ:08.国税通則法 裁決・判例
作成日:08/31/2010  提供元:21C・TFフォーラム



 売上と利益の減少を理由に、所得税と消費税の納税猶予の申請をしたことの可否が争われた事件で、名古屋地裁(増田稔裁判長)は事業の休廃止もしくは事業上の著しい損失があったものと同視できるか又はそれに準じるような重大な売上の減少があったということはできないと判断して、納税猶予の不許可処分を妥当とする旨の判決を言い渡した。

 この事件は、料理飲食業、鉄筋圧接業、鉄鋼業、家電小売業を営む各個人事業者が売上の悪化等を理由に、納税猶予の申請を定めた国税通則法46条2項5号に基づき納税猶予の申請をしたところ、原処分庁が納税猶予の不許可処分をしてきたため、その取消しを求めて訴訟を提起していたという事案だ。

 原処分庁は、売上の減少の判断は調査期間と基準期間の売上金額を比較する方法によると指摘、売上又は利益の減少について、その減少の程度や期間にある程度の幅をもって判断すべきであるという納税者側の主張は納税猶予制度を形骸化させる結果になると主張して取消請求の棄却を求めていた。

 これに対して判決は、国税通則法46条2項4号、5号該当の事実の判断の際、売上の減少とは単に従前に比べて売上が減少したというだけでは足りず、事業の休廃止又は事業上の著しい損失があったのと同視できるか、又はこれに準ずるような売上の減少があったことをいうものと解釈。

 その結果、基本的には猶予取扱要領が用いている調査期間及び基準期間による判断が相当であり、これによらない任意の期間設定を定めることは納税者の恣意的な期間設定を許す結果となり、納税者間の公平を害するものとして妥当ではないと指摘するとともに、納税猶予の不許可処分をした処分行政庁の判断に裁量権の範囲を逸脱し又は濫用した違法があるということはできないと判示、納税者側のそれぞれの取消請求を棄却した。

(名古屋地裁2010.01.18判決、平成20年(行ウ)第45号等)