必要経費性の否認は支出を特定して記載する必要があると判断
カテゴリ:08.国税通則法 裁決・判例
作成日:05/19/2015  提供元:21C・TFフォーラム



 更正の理由の提示に不備があるか否かの判断が争われた事件で、国税不服審判所は必要経費性を否認して更正する場合には否認する支出を特定して記載しなければならないと判断、原処分の一部を取り消す裁決を言い渡した。

 この事件は、大学の准教授が執筆及び講演等から生じる所得を事業所得として申告したところ、原処分庁が事業所得ではなく雑所得に該当し、必要経費に算入したものの殆どが家事関連費等に当たるとして否認、所得税の更正処分等を行ってきたのが発端。そこで請求人が、著述業を行う目的を達成する意思で執筆及び講演等を行っていたのであるから事業所得に該当し、費用はいずれも業務の遂行上必要なものであるから必要経費に算入することができると主張するとともに、調査の手続きに違法があり、かつ更正の理由にも不備があると主張、原処分の全部取消しを求めて審査請求したという事案である。

 原処分庁側は、更正通知書に記載された処分の理由は行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与えるという行政手続法14条(不利益処分の理由の提示)の趣旨に沿って記載されており、理由の記載に不備はないと金論して、審査請求の棄却を求めた。

 これに対して裁決は、まず所得区分については事業といえる程度の規模・態様で行われたとは認められないため、雑所得に該当すると判断して棄却した。しかし、更正通知書上の旅費交通費及び新聞図書費の一部が必要経費に該当しない旨の理由の記載が、必要経費として認められない費用がどの費用であるかが特定されていない、費用の内容を理解できない、要件該当性を判断できないことから、更正の理由を検証し、その適否を検討することができないと指摘。その結果、行政手続法14条の趣旨・目的を充足する程度に具体的に根拠を明示したものとは評価できないと判断して、原処分の一部を取り消した。

(2014.09.01国税不服審判所裁決)