大使館勤務職員の過少申告に偽りその他不正の行為を認定
カテゴリ:08.国税通則法 裁決・判例
作成日:06/22/2004  提供元:21C・TFフォーラム



 A国大使館に勤務する日本人職員の過少申告行為が国税通則法の「偽りその他不正の行為」に当たるか否かの判断が争われた事件で、東京地裁(藤山雅行裁判長)は給与の全額を申告しなければならないことを認識しつつ、全額で申告した場合に生ずる納税額の差額の支払いを免れる意図から過少申告したものであり、偽りその他不正の行為に該当すると認定、課税処分の取消しを求めた大使館勤務職員の請求を棄却する判決を下した。

 この事件は、A国大使館に勤務する日本人職員(平成6年から勤務を始め11年に退職)が、平成6年分の申告の際に大使館勤務前の給与所得と退職所得しか申告しなかった上、翌年以降も大使館から支給された給与収入の一部しか申告(概算率による申告)しなかったことから原処分庁が更正処分、過少申告加算税の賦課決定処分をしたため、その取消しを求めていた事案。一連の大使館勤務職員の申告をめぐる争いの第一弾目の判決になった。

 判決は、偽りその他不正の行為には単なる不申告行為は含まれないが、納税者が真実の所得を秘匿、課税の対象になることを回避する意思の下に、所得金額をことさら過少にした内容虚偽の申告書を提出し、正当な納税義務を過少にしてその不足税額を免れる行為は、単なる不申告に止まらず偽りの工作的な不正行為ということができるから、大使館勤務職員の申告は偽りその他不正の行為に該当すると認定。また、大使館と国税庁の間に過去に概算申告を認める合意があったことを理由に、過少申告には正当な理由があったという大使館勤務職員の主張に対しても、正当な理由を認めるべき真にやむを得ない理由は認められないと斥け、大使館勤務職員の原処分の取消請求を棄却した。控訴中。

(2004..02.12東京地裁判決、平成13年(行ウ)第313号、318~322号)