更正通知書に判断の過程が明示されていると認定、棄却
カテゴリ:08.国税通則法 裁決・判例
作成日:02/09/2016  提供元:21C・TFフォーラム



 更正処分が行われた際の更正通知書に附記された理由に不備があったか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、更正通知書には原処分庁の判断の過程が示されており、更正処分の理由の提示に不備はないと判断、審査請求を棄却した。

 この事件は、審査請求人が、匿名組合契約の出資者(外国法人)との間で締結した参加利益契約に基づく匿名組合契約に係る利益の分配を受ける権利を出資者に譲渡したことにより生じた損失を譲渡所得の損失の金額として所得税の確定申告をしたのが発端。しかし原処分庁が、損失の金額は譲渡所得に該当しないなどを理由に否認、所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしてきた。

 そこで請求人が、更正処分の理由附記の不備を理由に、その全部取消しを求めて審査請求したという事案である。請求人は、更正通知書には匿名組合契約の出資者である外国法人との間で締結した参加利益契約は配当を受ける旨を約す契約であり、請求人と外国法人との間の買戻合意を、参加利益契約を解除する契約であると認定した根拠となる具体的な事実が摘示されておらず、その法的評価の判断に至った過程自体を明示したものではないと指摘した上で、更正処分庁の恣意抑制及び不服申立ての便宜という理由附記制度の趣旨から著しく逸脱した違法なものである旨主張して、原処分の全部取消しを求めたわけだ。

 これに対して裁決は、更正処分の理由として1)参加利益契約は請求人が外国法人に出資を行い、その出資額に応じた配当を受ける契約であり、2)買戻合意は参加利益契約を解除するものであったと認められるから、原処分庁がその合意を権利の譲渡ではないと捉えていることが明らかと認定。さらに3)請求人が参加利益契約に基づき支払った拠出金と買戻合意に基づき受領した金員との差額である損失額は、資産の譲渡により生じたものではないことが示されているとも認定。結局、更正通知書には原処分庁の判断の過程が明示されており、同通知書に附記された更正処分の理由に不備はないと判断、棄却した。

(国税不服審判所2015.06.01裁決)