相続人間の主観的事情と判断、正当な理由の主張を否定
カテゴリ:08.国税通則法 裁決・判例
作成日:07/28/2015  提供元:21C・TFフォーラム



 相続税の申告を期限内にできなかったことに正当な理由があるか否かの判断が争われた事件で、国税不服審判所は亡弟の妻が亡弟の財産内容を開示しなかった等の事情は相続人間の主観的事情にすぎないため正当な理由は認められないと判断、審査請求を棄却した。

 この事件は、亡父の相続税の納付義務を承継した審査請求人が、原処分庁の調査を受けて期限後申告書を提出したところ、原処分庁が無申告加算税の賦課決定処分を行ってきたため、期限内に申告書を提出できなかったことに正当な理由があると主張、原処分の全部取消しを求めて審査請求したという事案。

 請求人は、1)亡父は、被相続人である亡弟の相続財産の全てを管理していた亡弟の妻に、相続財産の全容を把握するための明細の提示を依頼したが応じてもらえず、2)亡弟の妻からの遺産分割調停に係る遺産目録等にはみなし相続財産が記載されていなかったため、記載された財産等に基づいて相続税の課税価格を計算した結果、課税価格が基礎控除額を下回ることになったのであるから、亡父が期限内申告書を提出しなかったことには正当な理由があるという主張を展開した。

 しかし裁決は、請求人が主張する1)の事情は、相続人相互の人間関係に基因する事情であり、また2)の亡父がみなし相続財産を課税価格に加えないことを自己判断して課税価格を計算した結果、課税価格が基礎控除額以下になったというのも、相続人相互の人間関係を前提とした亡父の自己判断に係る事情といえると指摘。

 その結果、請求人が主張する事情は、亡父を含む相続人間の主観的事情に過ぎず、亡父が相続税の期限内申告書を提出しなかったことに、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があったということはできないことから、国税通則法66条1項ただし書が定める「正当な理由があると認められる場合」に該当しない該当しないと判断、審査請求を棄却した。

  (国税不服審判所2014.11.07裁決)