連帯納付義務を免れる目的の解除に基づく更正の請求を否定
カテゴリ:08.国税通則法 裁決・判例
作成日:10/16/2012  提供元:21C・TFフォーラム



 遺産分割協議の合意解除が、後発的な更正の請求事由の一つである「やむを得ない事情による解除の場合」に当たるか否かの判断が争われた事件で、国税不服審判所は合意解除の目的が相続税の連帯納付義務を免れるためのものであることから、やむを得ない事情に当たると解することはできないと判断、審査請求を棄却した。

 この事件は、既に成立していた遺産分割協議に基づく代償債務が履行されないことから遺産分割協議を解除した後、改めて審査請求人らが一切の遺産を相続しない旨の遺産分割協議をして更正の請求をしたのが発端。これに対して原処分庁が更正すべき理由がない旨の通知処分をしてきたため、その全部の取消しを求めたもので、遺産分割協議解除後の再分割が更正の請求の事由に該当するか否かが争点になった事案である。

 つまり、解除が国税通則法施行令が定める「解除権の行使による解除の場合」又は「契約の成立後生じたやむを得ない事情による解除の場合」に該当するか否かが判断のポイントになっていたわけだ。

 しかし裁決は、遺産分割協議は債務不履行解除ができないため、解除権の行使によって解除された場合には該当しないと認定。また、当初分割を解除する合意と同時に再度の遺産分割協議を行ったもので、代償債務を負う者に係る相続税の連帯納付義務を免れることを目的としたものといわざるを得ず、こうした場合にまで後発的な更正の請求を認めることになると、相続税の連帯納付制度そのものを否定することにもなると指摘。

 結局、連帯納付義務を免れる目的でされた合意に基づく更正の請求まで「やむを得ない事情によって解除された場合」として認めているとは解することが到底できず、また「契約の成立後生じたやむを得ない事情によって解除されたもの」と認めることもできないと判断して、審査請求を棄却している。

(国税不服審判所、2012.03.08裁決)