殊更の過少申告に対する重加算税の賦課は適法と逆転判決
カテゴリ:08.国税通則法 裁決・判例
作成日:01/08/2002  提供元:21C・TFフォーラム



 相続税の更正処分に係る重加算税の賦課決定処分が国税通則法68条1項の要件を満たしているか否かが争われていた事件で、東京高裁(伊藤螢子裁判長)は単なる過少申告にとどまるものではなく、仮装・隠ぺいに基づく申告行為と認定、原審を取り消した。

 この事案は、相続税の申告をめぐって協同組合に対する出資金やNTT株式を仮装・隠ぺいして、いわゆる殊更の過少申告をしたものと原処分庁が認定、重加算税の賦課決定処分等をしたことが発端になったもの。これに対して納税者が原処分の取消しを求めて提訴したところ、一審の宇都宮地裁は仮装・隠ぺいの事実は認められないと判断、納税者の主張を認容したため、原処分庁が控訴、原審の取消しを求めていたという事案だが、いわゆる殊更の過少申告に係る重加算税の賦課決定処分の適否が争われた珍しい事案でもある。

 控訴審は一転、納税者が過少申告の確定的な意図のもとに、殊更、出資金等を相続財産に計上しないで過少申告する一方で、相前後して虚偽の申告内容と整合性を持たせるために、出資金が譲渡されているかのような協同組合の確定申告書を提出し、仮装行為を行っていたと認定。また、NTT株式についても、相続財産であることを認識しつつ代表取締役等の地位を利用して、内容虚偽の有価証券の内訳書を作成して申告書に添付するなどの仮装・隠ぺいの行為を行っていたと認定した。結局、これらの行為は単なる過少申告にとどまる行為ではなく、殊更に過少申告を装った仮装・隠ぺいに基づくものであり、通則法68条1項が定める仮装・隠ぺい行為に当たると判断するとともに、重加算税の賦課決定処分は適法であると原審判決を否定、国側の逆転勝訴となる判決を下している。

(2001.04.25 東京高裁判決、平成12年(行コ)第273号)