却下の異議決定そのものが誤りのため審査請求は適法と裁決
カテゴリ:08.国税通則法 裁決・判例
作成日:06/17/2014  提供元:21C・TFフォーラム



 異議申立書の記載不備を理由に、審査請求そのものの適法性の判断が争われた事件で国税不服審判所は、却下の異議決定そのものを誤りと指摘した上で、適法な異議申立ての決定があったのであるから審査請求は適法であると判断、原処分を全部取り消した。

 この事件は、納付すべき国税の徴収を目的に、審査請求人が日本出国後に、普通預金の払戻請求権等の差押処分をしたことが発端になったもので、請求人が1)差押処分によって徴収しようとする国税の決定処分に係る通知書及び差押処分に係る通知書のいずれも受け取っていないこと、また2)差押処分の対象になった普通預金の払戻請求権等は生活に必要な資金であり、差押禁止財産に該当するなどを理由に、原処分の全部取消しを求めて審査請求したという事案である。

 これに対して原処分庁は、異議申立書の記載不備を期限までに補正しなかったことを理由に異議申立てが却下決定されていることから、審査請求することはできず(通法75(3))、審査請求そのものも却下されるべきであると主張。つまり、異議申立てそのものが適法か否かという問題に帰着し、異議申立書の記載不備が軽微なものであるとして、異議審理庁が職権で補正しなければならなかったか否かがポイントになった事案である。

 裁決はまず、異議申立書の記載不備は原処分庁が職権で補正する必要があった軽微なものであると指摘。また異議申立てが、差押処分があった日から1年経過後になされているものの、不服申立期間に関する正当な理由(通法77)も認められることから却下決定そのものが違法であり、審査請求は適法な異議申立てを経たものであると認定。結局、差押処分は国税の徴収の所轄庁でない税務署長による違法な処分であるから、差押処分のその余の点について判断するまでもなく、原処分は全部取り消すべきであるという判断をしている。

(国税不服審判所 2013.09.03裁決)