元契約の合意解除は更正の請求が目的と請求を棄却
カテゴリ:08.国税通則法 裁決・判例
作成日:09/08/1997  提供元:21C・TFフォーラム



 不動産賃貸契約の合意解除による賃料の減額、また改築資金の支払利息の計上洩れを理由にした更正の請求の是非が争われていた事案で、国税不服審判所は「契約の成立後生じたやむをえない事情」には該当しないと判断、請求人の主張を全面的に棄却した。
 この事案は、一人医療法人を経営する医師が、更正の請求期間が経過した後に税務署の電話照会から不動産所得に係る支払利息の計上洩れを把握、嘆願書を提出したものの減額更正されなかったのが発端。そこで、元の不動産賃貸契約に瑕疵を発見したことから賃料を減額する新契約を締結するとともに、新賃料は元契約書の締結時まで遡及して精算するとの新たな特約条項に基づき過大に受領していた賃料を医療法人にバックした上で、更正の請求をしたというのが一連の流れ。つまり、合意解除は元契約の内容の瑕疵という客観的理由によるものであり、更正の請求は認められるべきであると主張していたわけだ。同時に、調査担当者が更正の請求に対する調査を行った際に、支払利息の計上洩れ、過大賃料について確認していることを理由に、職権による減額更正も求めていたというもの。
 審判所はまず、元契約の合意解除は支払利息相当額の減額更正を求めることを目的にしたもので、その事情にも契約の成立後生じたやむを得ない事情は認められないと判断。また、職権発動による減額更正についても、税務署長が納税者に対して減額更正を約束したなどの特段の事情がない限り、減額更正するかどうかの判断は税務署長の裁量に属すると解釈、審査請求人の主張を棄却している。賃料の減額を除けば元契約と新契約の効力に余り変更はなく、合意解除に至る強い客観的な理由が請求人に望まれた裁決ともいえる。(96.10.31裁決)