遺産分割協議の法定解除は法的安定性を害すると判示、棄却
カテゴリ:08.国税通則法 裁決・判例
作成日:12/24/2014  提供元:21C・TFフォーラム



 代償分割債務の不履行を理由にした当初の遺産分割協議の解消と再遺産分割協議に、更正の請求が認められる場合の「やむを得ない理由」があるか否かの判断が争われた事件で、大阪地裁(田中健治裁判長)は遺産分割協議の法定解除を認めると遺産分割が繰り返されることになる結果、法的安定性を害することにもなるため法定解除は許されないと判示して、訴えを棄却した。

 この事件は、相続財産の全部を相続した相続人が、その代償として他の相続人に金員を支払う旨の遺産分割協議をして相続税の申告をした後、代償債務の不履行を理由に当初の遺産分割協議を解除、他の相続人は相続財産を取得しない旨の再遺産分割協議をして更正の請求をしたところ、原処分庁が請求を棄却したため、他の相続人が原処分の取消しを求めて提訴したもの。当初の遺産分割協議に法定解除に伴う再遺産分割協議に、特例的に更正の請求が認められる場合のやむを得ない事情があるか否かが争点になったという事案である。

 相続人側は、当初の遺産分割協議は相続財産をすべて取得した相続人の代償債務の不履行を原因に、法定解除権の行使により解除されたものであるから、やむを得ない事情によって契約を解除し、取り消された場合に該当すると主張して、原処分の取消しを求めた。

 判決は、平成元年2月9日の最高裁判決を拠り所に、遺産分割協議の成立に伴って他の相続人に負うことになった債務が履行されない場合でも、他の相続人は民法541条に基づく遺産分割協議の解除はできないと解釈。つまり、遺産分割協議は協議成立とともに終了し、その後は債務を負担すべき相続人と債権を取得した他の相続人との債権債務関係に係る履行問題が残されるのみという考えからだ。

 結局、遺産分割協議は共有物の分割協議と異なり、多種多様な財産の集合体である遺産の分割を行うものであるから、遺産分割協議の法定解除が認められると、遺産分割が繰り返されることで法的安定性を害することにもなるから、遺産分割協議の法定解除は許されないと判示して、請求を棄却している。

(14.02.20大阪地裁判決、平成24年(行ウ)第183号)