生計を一にしない母親の病気も納税猶予該当事実と裁決
カテゴリ:08.国税通則法 裁決・判例
作成日:09/24/2013  提供元:21C・TFフォーラム



 生計を一にしない母親の病気等が納税猶予該当事実に当たるか否かの判断が争われた事件で、国税不服審判所は、滞納後に発生した母親の入院加療に伴う支出は滞納国税を一時に納付することができない事実に該当すると認定、納税猶予不許可処分を取り消した。

 この事件は、審査請求人が事業を廃止したこと及び生計を一にしていない母親が病気になったことを理由に納税猶予の申請をしたところ、原処分庁が、事業を廃止した理由には法令の規定、公共事業の施行又は業績の著しい悪化等のやむを得ない理由が認められず、母親が病気にかかった事実から国税を一時に納付することができなくなったとも認められないという認定から納税の猶予不許可処分をしたため、滞納者がその取消しを求めて審査請求したという事案である。
 
 つまり原処分庁は、請求人が母親の入院加療に伴う支出を行う以前から税金を滞納しているのであるから、国税通則法46条(納税の猶予の要件等)2項5号(第2号類似)の猶予該当事実に基づいて、滞納国税を一時に納付することができなくなったとは認められないという判断をしたわけだ。

 これに対して裁決は、納付困難税額がある一方で、猶予該当事実に基づく支出又は損失がある場合は、その支出又は損失の額が納付困難の原因になっているものとみるのが相当と示唆した。

 その上で、請求人には納付困難税額と猶予該当事実(生計を一にしない母親の病気)に基づく支出とがそれぞれ存在することから、猶予該当事実に基づき、滞納国税を一時に納付することができなかったと認定。また、国税通則法46条2項に規定するその他の要件も充足していると認定。結局、猶予該当事実と納付困難の原因との間の基因関係の不存在を理由とする原処分には違法があると判断して、原処分を全部取り消したわけだ。

 (国税不服審判所2012.10.29裁決)