原審を取り消して控訴審は馴れ合い訴訟と認定、納税者敗訴
カテゴリ:08.国税通則法 裁決・判例
作成日:11/07/2001  提供元:21C・TFフォーラム



 遺産分割無効確認訴訟の判決を理由にした更正の請求が有効か、無効かの判断が争われた事件で、福岡高裁(井垣敏生裁判長)は馴れ合い訴訟による更正の請求は認められないと判断、納税者の主張を全面的に認めた原審判決を取り消す逆転判決を下した。

 この事件は、最高裁まで争われた遺産分割協議無効確認訴訟で敗訴した納税者がその判決によって当初の相続税額に変更が生じたことから更正の請求をしたことが発端になったもの。これに対して、原処分庁が馴れ合いによる判決と認定、更正すべき理由がない旨の通知処分をしてきたため、納税者がその通知処分の取消しを求めて提訴したところ、一審の熊本地裁は納税者の主張を全面的に認容する判決を下したわけだ。そこで、この判決を不服とした国側が控訴、原審判決の取消しを求めていたという事案だ。

 最高裁まで争われた遺産分割協議無効確認訴訟が相続人間の馴れ合いによるものであるか否かがポイントになっているが、控訴審では国側が新たに信義則違反を主張。つまり、税務署長の更正の権限の消滅後に、馴れ合いによる訴訟を理由に更正の請求をして税額の軽減を求めるのは国の利益を著しく阻害する行為であるという理由からだ。

 判決は、分割協議が相続税の軽減規定の適用を受けるため、協議どおりの分割意思がないにも関わらず、申告期限内に遺産分割が成立したという外形を作出するための相続人間の通謀による虚偽、仮装の合意によるもので、通謀虚偽表示により無効であることを、納税者が申告当時知っていたと認定。結局、馴れ合いによるもので更正の請求は認められないと判示、国側の通知処分を適法とする逆転判決を下した。しかし、納税者は上告した。

(2001.04.12 福岡高裁判決、平成12年(行コ)第12号)