公示逃れの修正申告は更正を予知したものではないと判示
カテゴリ:08.国税通則法 裁決・判例
作成日:10/02/2001  提供元:21C・TFフォーラム



 いわゆる公示逃れ目的の修正申告書の提出が、調査による更正を予知してなされたものか否かが争われた事件で鳥取地裁(内藤紘二裁判長)は、原処分は国税通則法65条5項の趣旨を誤って解釈していると判示、納税者の主張を全面的に認容する判決を下した。
 この事件は、自動車教習所の理事長夫婦が土地に係る長期譲渡所得があったにもかかわらず、公示逃れを目的に確定申告期限中の申告の際には同所得を除いて申告したことが発端になったもの。そこで、納税者が確定申告期限後に、その譲渡所得に係る修正申告書を提出したところ、原処分庁が調査による更正処分を予知した修正申告と認定して過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、納税者がその取消しを求めていたという事案だ。
 判決は、修正申告書提出までに至る事実関係を認定した上で、まず国税通則法65条5項の趣旨を客観的要件と主観的要件から解釈した上で、修正申告の意図や動機には複数のものが併存し得ることは否定できず、併存し得る複数の意図や動機の強さ、程度も異なると示唆。また、国税通則法65条5項が課税コスト削減の機能や効果を有していることは否定できないとしても、その趣旨は納税者が正確な納税額を自発的に申告することを基本にしていると指摘した。その結果、申告が確定申告期間を経過して事後的になったとしても、同条項の基本的な立法趣旨は納税者の正確な納税額の自発的な申告を奨励することにあり、この事例のようなケースに過少申告加算税を賦課すると、納税者の自発的修正申告の意欲を減退させることにもなりかねないと判示した。これに対して、国側が控訴中。
 (2001.3.27鳥取地裁判決、平成一一年(業ウ)第一号)